FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ここに出会える僕たちでさえ 刹那の夢ならば 後ろめたくないくらい楽しみを感じても

第44幕

 我々、超能力者が集まる『機関』は、涼宮さんが生み出す閉鎖空間で強暴の限りを尽くし、領域を広げる神人を沈静化、退治する為にあります。それによって、涼宮さんの精神面での安息をもたらし、閉鎖空間拡大による地球の次元転換を阻止できるのです。ちょっとしたヒーローですよ。だからと言って、赤いスーツに全身を包んだり、昆虫を模した仮面を付けたりはしませんがね?
 今の涼宮さんは表面上怒ってはいますが、閉鎖空間を発生させる兆候は無いようです。なので、彼が酷い状態になる事はないでしょう。
「さぁて、キョン。覚悟はいい?」
 箱型のディスプレイが乗る机の中から何かを探している涼宮さんが、椅子に拘束されている彼に向かって話しかけていますが、彼は覚悟は出来てないでしょうね。僕が同じ立場なら、開き直るでしょう。それで閉鎖空間がなくなるというのであれば安いものです。本当は、嫌ですけど。
「は、は、はは、ハルヒ! かんふぁえ直せ! そんな事したら一生ここには来ないからなぁ!!?」
 おそらく"考え直せ"と言っているのでしょう。
 こんなに動揺している彼を見るのは珍しいですね。もう少し、見ていたい気持ちになりましたので、どうかお赦しを。
 探し物を発見した涼宮さんが、黄色の……少し硬そうなビニール紐がついた何かを落としながら、片方には理容鋏、もう片方の手には、一気に毛髪を刈り取る事ができる機械をち、トン、トンと一歩一歩やっと歩くことに成功した人型ロボットのように、しかし、力は込めて彼に迫り、
「アタシも鬼じゃないわ。どっちがいいか選ばせてあげる。どっちがいい? ハサミとバリカン」
「おお、どっちに……って、どっちも変わらないだろ!! 結局、刈り取られるんじゃないか!?」
「もちろん」
「鬼!」
「あんたが悪いのよ。あ・ん・た・が!」
「そんな呪文は唱えんでいい!」
「なに意味の分かんない事・・・ふふん、そう」
 おや、どうやら何か思い付いたようですね。でも、あの頬を片方あげる仕草を見るに、あまり良いこととは思えません。朝比奈さんは百面相を続け、長門さんはじっと静観しているので、そろそろ助けた方がいいでしょうか。
 机に一旦戻ると、ハサミとバリカンをその上に置き、落ちていたものを拾い上げ、解き、鈍い弦楽器のような音を立てながら両端で持って構えて 「こっちのお仕置きでもいいのよ?」 と見下すように彼を阿遮一睨。ええと、こんな人物を液晶画面の中で見た気がします。縄跳びではなく、鞭だった気がしますが。
「おい、古泉。もうやばいぞ。ハルヒが正気を失っちまってる」
 と、正気を失いかけている彼が一言。
「キョンさん。美容院と理容院には決まりがあります。美容院は十三平方メートルにつき、美容椅子が六台まで置け、理容院は三台までとなっているのです。そして、その作業面照度は100ルクス以上で、本当は300ルクスほどが好ましいと――」
「どうでもいい!! っぐ!?」
「ほらほらキョン。どうするの? ア、アタシはどっちでもいいのよ。坊主にするか、ちょんまげになるか、トサカになるか白塗りツンツン頭になるか。それともスパイキーウルフ? シェイクにセクシーカールにトルネードカール。ショートウルフなんてのもいいわね!?」

 ルクスとはラテン語で「光」という意味を持ち、一平方メートルの面が一ルーメンの光束で照らされる照度とされています。例として、月明かりを倍にしたものが一ルクス。夜のアーケード街の明るさが百五十~二百ルクス。蛍光灯二本が八畳間を照らす程度が三百ルクスとなっており

「古泉! 口を動かさずに、手と足使って助けろ!」
「邪魔しちゃだめよ古泉君! これは躾なの……SOS団として風紀を乱すような雑用は矯正してあげないといけないじゃない。団長として!」
「お前、今の状況でよくそんなこと―――」

   バシッ

「っさい! 団長様に逆らおうっての?!」
 床に威嚇の一撃を一つ。そのまま彼の顎を、白いプラスチックの方で押し上げる。
 これは、そろそろ本気で止めなければ、彼にも彼女にも、余計な性癖が生まれてしまいそうですね。
 そう思った僕は、傍から見ると仲睦まじい二人のもとへ向かったわけです。


<<Back   Next>>



スポンサーサイト
コメント
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。