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あんな夢こんな夢いっぱいあるけど

第41幕

 長門の言う、同次元自立型分身同位体は消え失せた。

 これだけで分かる奴が居るなら賞賛の辞を送りたい。今すぐ賞状を渡すからウチに来るといい。場所は葛飾区亀有公園前のどこかにある派出所なので心して来るように。きっと、ごつい眉毛の繋がった警察官が出迎えてくれるはずだ。
 家から遠い遠い場所の話はさて置いて、長門が一番最初に口にしたこの言葉を、俺は理解できなかったよ。そうだ、詰まりは俗に言う死の化身、他人の空似などとは言えない、一寸違わぬ外見を持つ "ドッペルゲンガー" ってやつだ。
 もう二度とあんな体験はしたくないね。生きた心地がしないってのはああいうことを言うんだろう。なんせ、想像してみてくれ。鏡の中でしか向かい合えない筈の人間が街中で、一人二人と出てきたらどうする? 俺は長門に電話する……前にもちろん逃げますよ、本物なのにな。

 ある晴れた日のこと。長い長いオトコ坂、もとい上り坂を上りながら日常のありがた~い時間を享受していた。やっとこさ終わった非日常にさよならを告げ、ハルヒがまた変な考えを起こさない事を祈る巡礼坂。その報いがある日は果たしてあるのか?―――はい、答えは"ありません"

 教室に入るといつも通り、窓際の一番後ろの席に我らがSOS団団長こと涼宮ハルヒが座っていた。その姿を眼の端に入れながら、谷口や国木田に朝の挨拶を済ませて自分の席の横に鞄をかけ、座る。
「よう、今日も無駄に元気か?」
 窓の外を眺めている少女は、手を後ろに組んでつまらなそうな、何とも思っていないような表情で応える。これだけ見ていれば、とても画になるんだがな。
「アタシは無駄な元気なんて使わないわよ。それより、キョン」
「ん?」
「あんたって美容院とか行かないの?」
「ああ、誰かさんのせいで金銭が足りないものでな」
「じゃあ、もっと早く来ればいいのよ。それか、小遣い稼ぎとかね。あたしの家の庭の草むしりなんていいんじゃない? 一平方メートルごとに十円で雇ってあげても良いわ」
「……遠慮しとくよ」
 毎日放課後は部室に顔を出し、週末には不思議探索。で、挙句の果てには唯一のプライベートの日曜まで雑用とは、一体何世紀前の奴隷だ。SOS団の辞書に人権という二文字は無いのかと、正面を向くハルヒを見ながら俺は思った。
「誰も日曜なんて言ってないわよ。朝でも夜でも、草毟ることなんて出来るでしょ。って、そんな事じゃなくて……まあ、いいわ。今日もちゃんと部室来なさいよね」


 放課後。ハルヒにそう言われなくとも、俺の足は当たり前のように部室に向かっていた。おいおい、キョン。他にやることは無いのか? バイトするなり、街角でパンを咥えた女の子と激突するなり、空から降ってきた大きなサーフボード付きの人方兵器に乗った女の子に出会うなり、未来のネコ型ロボットに遭遇するなり……そうなったら、もう一つくらい身体を増やす道具を所望するね。今度はちゃんと言うことを聞く奴がいい。そのくらいハルヒの行動は突発的で広大で、頭の中も体中の筋肉内臓、ミトコンドリアもヘトヘトですってくらいなのさ。今日だって、部室の扉を開けたらそこはロストグラウンドか、ムー大陸でした……なんて夢を見させられるかもしれない。そのくらい毎日、ハチャメチャが押し寄せてくるんだ。
 扉をノックして、中から何も反応がないのを確認して教室に入る。


 俺は…………夢を見ているんだろうか。


 文芸部を隠れ蓑・・・にせず、占拠して発足された筈のSOS団の部室は裁判所になっていた。
 なわけない。

 コンピューターが乗り、団長と書かれたの三角錐の立て札のあるハルヒの机はそのままに。長机は二手に別れ、その間にはまるで証人席のように一つの椅子が置かれている。えっと、俺、何かした?

 

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