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心描き出す地図上の未知なるフロンティア

第38幕

 ハルヒコ率いる七名の集団は岩戸の前に立つ。先頭に居る団長様が 「じゃあ、行くぞ」と声をかけて岩戸を開く。岩戸は押し戸だったようで、見た目の割には軽そうに見えた。もう少し、本物っぽく作れなかったのか長門……と思ったが、次の光景を見て腑に落ちた。






「WAWAWA 忘れ物ぉぉぉぉ♪ あちきの忘れ物ぉぉぉぉ♪ あの日、あの時、忘れちまぁあった ドレスぉ欠片ぁぁぁ♪」








 北高の校門前で、白地にカスミ草をあしらったような着物を着た谷口がプラスチックの酒箱の上でコブシを効かせていた! そして、えせ演歌歌手の頭上には 『おめでとう! 三十路岬!』のアーチ看板。
 いや、そういうことか、納得――――――いくかぁぁ!! さっぱりわけ分からないぞコレ!? 驚きを表現できず、辛うじて出た言葉は、
 
「何やってんだ・・・あいつ・・・」

「お、やって来たにょろ~ めがっさおめでとうなのっさー!」
「お疲れさまでーす」
「っは? 何だ? 一体どういうことだよ!」
「つ、鶴屋くん!? どうしてっ、ふえぇ? ほぇえ?」

 この文武両道を体現するカチューシャ男が驚くのは珍しい。朝比奈さんはいつも通りですが。
 しかし、鶴屋さんに国木田まで・・・誰でもいい、説明を頼む。特に古泉! お前何か知ってるだろ。

「ええ、もちろんです。我々が用意させて頂きました。今回ばかりは、鶴屋さんに助けられましたね」
「説明になってないぞ」
「失礼。キョンちゃんは校門からあの洞窟へ?」
「ああ、そうだよ。お前たちもか?」
「ええ、我々もです。我々、つまり、涼宮さん、朝比奈さん、長門さん、私の四人が登校時に偶然出会った時から疑念を抱いておりましたが、その後すぐに長門さんが異変を説明して下さいました。「我々が向かっている北高は洞窟と化している」 とね。それも、先日の失くしものを見つける為だけにです。驚きました。やはり、彼は興味深い人です」

 なるほどな。詰まり、この魔窟となった学校での目的を果たした後に、ハルヒコがこの存在を認めないように、鶴屋さんに仕掛けをお願いしたって事か。しっかし、何で演歌なんだ……?

「さあ、それは私にも理解しかねます。ですが……どうです? 私も結構、頼りになるでしょう?」

 そう言って、身体を近づけてくるえせ超能力者。ああ、頼りになるよ、そのねっとりとしたスキンシップがなければな。
 古泉の無駄にある胸のモノがくっ付きそうになる寸前で身体が左へ引かれる。

「……私には、なぜその女が良くて私では駄目なのか、分かりませんが」
「ああ、まあそれは……」
「私とキョンちゃんは、護り護られる存在なの。一心同体なの! 貴方はもう諦めたらいいのに。あまりしつこ過ぎると嫌われるわよ?」

 グルルと唸り声が聞こえそうなほどに険悪なムードを醸し出す瑠璃色の狼。

「貴方こそ、しつこ過ぎるのではないですか? もっとキョンちゃんの気持ちを考えてあげた方がよろしいかと思いますが」
「貴方に言われたくないわ」
「キョンちゃんは局所的で濃厚なのがお好きなのですよ」
「な……まさか……っ、そんなわけないじゃない!」

 まて古泉、それは何処からの情報だ。そんなのが好きだなんてあたしは一言も誰にも言った覚えが無いぞ。あと、なんで信じそうになってるんだこの狼は……。
 あたしがどうしようもなく険悪な檻に閉じ込められていると、歌い終わったのか、白い着物姿の女が小走りで寄って来た。この檻を見ても、ものともしないとは何という救世主伝説。

「よう、キョン! どうよ俺の歌は! これでそこらの男子なんてイチコロだぜっ!」
「ああ、そうだな。上手かったよ谷口。プロを目指したらいいんじゃないのか?」
「HAHHA! キョン、プロなんてなっても彼氏は出来ないぜ? 仮に出来たとしても濃密なデートの時間が削られちまうだけさね。だから、俺はプロなんか目指さない! この歌唱力とあの自作のアーチで彼氏候補を集めて見せるさ!」

   バキィッ!

「……って。おぅわ!! 俺の作った最高カレシ人数伝説の礎となるアーチがぁぁぁ!!?」
「ん? 何? 邪魔だぜ、コレ。格好悪いし。SOS団本部のある場所にこんなダサイの置いておけるかよっ」

 腕組で仁王立ちする団長の横を通り過ぎて、綺麗に真っ二つとなったアーチを拾う谷口。

「ご、ご・・・ごゆっくり粛清してやるぅぅぅぅぅ!」
「―――あれぇ、行っちゃった。バイト代いらないのかな。じゃあ、貰っちゃおうかなぁ」

 (おそらく) 泣きながら走り、校門を出て坂を下っていく谷口を見て呟く国木田。ああ、谷口……無常なり。だけど同情はできんな。帰ってくる前にはその"俺"っていう一人称を変えて来いよ。あと、演歌って……お前は一体どの年代を狙っているんだ。同年代を狙うのなら、やはり簡単にJ-POPとかロックとかアイドル路線とか色々あるだろう……いかん、谷口がフリフリキュートな衣装を着てオンステージしているところを想像したらどうにも観客の姿が浮かばない。って、なぜあたしはこんなプロデュースまがいな事を・・・タニグチマスターになんぞ成りたくは無い、否定!
 
「はいはいっ、今日はお開きなのっさー! 次の文化祭で出そうと思っている試作型は楽しんでくれたっかな?」

 えっと、カンニングペーパーは何処にあるのだろうね。そう疑いたくなるような口調で鶴屋さんが伝え始める。ハルヒコもそうだが、このお二人は上着がワイシャツだけで寒くないのだろうか。

「もう最高だったっすよ~、見たことも無い生物が沢山いて、驚きの連続だった!」
「そうかいそうかいっ、予想以上に楽しんで貰えたようで良かったにょろ~」
「それにそれに……」

 興奮が冷めないのか、意気揚々と鶴屋さんに洞窟内の出来事を話し続けるわんぱく団長。本当に楽しめたようだな。こっちはそれどころじゃなかったってのに、羨ましいよ。
 
「ですが、涼宮さんはそれほど楽しんでおられたように思えませんね」

 左腕にいる少女とのいがみ合いを止めた古泉が意味ありげに喋り始める。なんだぁ、じゃあまたこんなアトラクションが繰り返されるってのか?

「いいえ、この事象自体は大変満足しておられました。けれど、彼はキョンちゃんを探すのが最優先事項だったみたいですね。一つ一つの珍獣珍事に感嘆してはいましたが、常に先を急いでいました。彼にとって重要なのは、貴方と回ることだったんですよ」
「……そうだな。あたしにその珍獣珍事で弄るのが目的だったんだろうよ」

 その答えを受けて、古泉はうさんくさい笑顔の純度を少し下げてあたしを見つめる。なんだ、何かおかしなことでも言ったのか?

「いえ、貴方を落とすのには、苦労させられそうですね」

 むぅ? 何だってんだ一体。もう落とされるのは御免だね。

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