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目的が全て、邪魔しないで

第26幕

 男の子は時に、玩具を欲しがるもので。それは創作意欲なのかコレクター精神なのか、はたまた自分の力を誇示したいが為の武器なのか。高校生になったあたしでもよく理解できない欲求である。

 地面に叩き付けると2メートルは弾むスーパーボールや、ビー玉を使って撃ち合いをするプラスチック人形、お菓子についてるオマケとか色々なものを欲しがって親を困らせては買って貰い、結局手を離して興味を失っていくのだ。まったく、無駄すぎる。
 ウチの弟なんかは……何故に嵌まったのだろうね……きっとTV番組で、赤と青の帽子を被った兄弟が手の平か、それよりも少し大きい四輪駆動車を走らせ、ライバルと競い合って成長していく様なものを観て大人の策略にでも引っかかったのだ。その四輪駆動車を買って貰った弟は、実際にデパートの屋上なんかでそれを競い合わせる大会に出たりもした。結果は惨敗。徐々にやる気を失くしていき、最後の大会でその小さな四輪駆動車を失くしてしまう。ああ、言っておくが誰かに取られたとかそういう話じゃない。簡単に言えば "消えた" んだ。ネズミ色の可塑性物質で囲まれた道路模型のスタート地点に少し浮かせ、審判の合図で手を放し、走らせ始める。道路に沿って走る数台の四輪駆動車。ウチの弟のそれは中々に頑張って速く走ってはいたが、曲がり角のところで脱線。そのままコンクリートを走って人ごみの中へと消えちまった。その後すぐに、探し回ったが見つからずに帰り道を暗ーい雰囲気で帰って来たのは言うまでも無い。神隠しなのか、鬼隠しなのか分からんが、とても残念な事には変わりない。
 詰まり、この "喜緑江美里" と名乗る来訪者は首に掛けていた大事なペンダントを先程、いつの間にか失くしてしまったらしい。

「それで、一体何処で消えたんだ? 校庭? 裏庭? それとも商店街?」

 おいおい、さっき失くしたって言ってるだろうに。それともお前は商店街だとしても探すつもりか。放課後でも商店街に行くなんて元気は、あたしにはないぞ。失くしたと言っているペンダントを消えたと言い張る、ハルヒコのウキウキクッキングな質問に長机の対面に座る喜緑江美里というウェーブな緑髪少女は思案している。あたしたちは来訪者に対して威圧的にならないように、喜緑さんの対面にまばらで立っている。窓側から長門、みつる先輩、座って長机に右腕を乗せて脚を組んでいるハルヒコ、古泉、朝倉、あたしの順番だ。

「おそらく……校庭だと思います。体育授業のときに失くしたのかも知れません。」
「なるほどねぇ。きっと貴方のペンダントには知られちゃならない重要な秘密が入っていた。それはもう、未来を変えるようなでっかいヒミツだ! だけど貴方には隙がまるで無い。仕方ないから注意力が散漫になる体育の授業を狙って奪ったに違いないぜ!」
「……」
「まあ、俺たちに任せておきなさい! 必ず、奴らの足取りを調べて突き止めてやるからな! これは計り知れない陰謀の匂いがするな……黒の組織か魔法使いか、いや、地底人が居るのかもしれないな……ハハッ、ちょっとワクワクしてきたぜ! まてよ、それじゃ……」

 居るわけがない。いや、居ないで欲しい。今、あたしが遭遇している宇宙人やら未来人やら局所的超能力者といった存在に加えてそんな輩が増えたら、あたしは旅に出るぞ? あの長い長い下り坂へな。
 勝手に1人で盛り上がっているハルヒコの言動を目の当たりにしての喜緑さんは偉人なのか、事前に聞いておいた情報故なのか、まったく動じていない。

「必ず、見つけて下さいね。そうでないと私、お嫁に行けなくなってしまいます。」
「……行く気なんて無いくせに―――グフッ!?」

 朝倉が突然声を上げてお腹の辺りを両手で押さえている。どうした? お腹でも空いたのか、この食いしん坊め。




 そうして、あたしたちSOS団+朝倉と喜緑さんは探しもの旅に出た。靴箱で外靴に履き替えて玄関を出るとハルヒコがL字型の棒を2本1セットで全員に渡していく。えっと、これは一体何なんだ?

「何って、ダウジングだよ。そんな事も知らないのかキョン子は?」

 いや、知ってるよ。知ってるよそのくらい。地水の水脈を探したり、地面に出てないものを探す奴だろ。でも、この本当に効果があるかのも分からない代物でペンダントを探す気か?

「探すのはペンダントじゃないぜ」

 本人の前で堂々と言い出すウチの団長。

「コレを使って、犯人の気配を感じ取るんだよ。きっと物的証拠は無いと俺は踏んだ。だから、あいつらの残留因子を捜索して、そこからアジトに潜入! そんでペンダントを取り戻せ! っていうシナリオだ」
「犯人は金脈か鉱脈か? だとすれば、到底人様の物に手を出すとは思えないんだが?」
「……いいから黙って探すんだよ! 団長命令だ! みつるはあっち。勇希はあっちで、朝倉と喜緑さんは向こうの方を探してくれ。キョン子は俺のサポートだ。お前1人じゃ何かドジリそうだからな」

 余計なお世話だし、そんなドジッ娘属性はあたしに存在しない! まったく失礼な奴だ。こうなったらさっさとペンダントを見つけてそれを証明してやるかね。と、珍しく意気込んでハルヒコより一歩前に出た時だった。急に左腕を掴まれて後ろへ引き戻される。何するんだっ!?―――などと思うのも束の間、あたしのすぐ目の前、10センチメートルも満たない辺りを白い何かが通り抜けた!

 ポトッ、と地面に落ちたそれはよく知っている代物で。夕方や夏の昼過ぎのTV中継や体育倉庫なんかでよく見かける、”硬式球”だった。な、危ないじゃないの! 当たったら死んじゃうって!! 当たらないにしても保健室行きは決定だっての!

「だから危ないっての」

 あたしの頭のすぐ上から声がする。えっと、あれ? 今どういう状況だ? あぁ、そっか。さっき引き戻してくれたのはハルヒコで、上から声がするのはあたしがハルヒコの身体を背中で感じているからで、つまり抱きとめられているというか、なんというか―――っと、えっと、その

「あ、あり……がと」
「……おい、気を付けろよお前らー!」

 校庭で練習をしている高校球児たちに訴えている。それからあたしの腕をゆっくりと離したハルヒコは、「たくっ、これだからドジッ娘は」と言って硬式球を拾って投げ返す。そうしてから、L字型の棒を構えて歩き出し校舎の奥へと向かっていく。な、何なんだ。さっきの感情は。いや、まさかそんな筈は……てか、ドジとは違うだろ今のはっ!?

   シャキン―――


  「 鳳 凰 天 翔 駆 ! 」


 GGG?! 

 と、混乱中に何故か日常では聞き覚えの無い金属と金属が擦れ合う甲高い音がしたと思えば、舞い踊る炎と共に風が巻き起こり、高校球児たちが空を舞っていた。その中心には見慣れた青い髪の女子生徒が1人。な、な、何をやっているのかねぇ。あのお子さんは・・・・父さん。思わず出した驚きの声は言葉に出来ないものなわけで……。

「大丈夫? キョンちゃん!? 怪我は無い?」
「あ、ああ。あたしは大丈夫だけど……」

 空を駆け上がった朝倉の姿は消え、いつの間にかあたしの後ろに居た。あたしより謎の竜巻に遭遇した球児たちを心配してやれ朝倉。

「いいのよ。ちょっとお灸を据えてやっただけだもの。それに、私はキョンちゃんが無事ならそれで良いの」
「いや、良くないだろ……?」

 良く観れば球児たちは辺りを見渡して不思議顔。そのうちに全員が立ち上がり、そのうちに思い思いに動き始めた。……怪我は、無い、のか?

「ね?」
「……あたしを心配してくれたのは嬉しいが。あいつらはわざと狙ったわけじゃないんだから、今度からあういう手荒な真似はやめなさいよ?」
「…………それより、早くペンダント見つけて帰りましょう。面倒で、何が楽しいのか分からないわ」
「お、おい朝倉!?」

 分かったのか分かっていないのか、まったく表情を変えずに探し物を再開する。ふぅ、仕方が無い。帰ったらまた言い聞かせ……いや、放っておこう。

 でもあたしはこの時、異変に気付くべきだったのだ。


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