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いま貴方の声が聞こえる、ここにおいでと

第20幕

「ええと、お前がキョンか?」

 その北高のブレザーを着た男は、右手で首の後ろを押さえながら言葉を発した。理解できる…ということは火星人やら水星人やら、はたまた宇宙怪獣なんかじゃないって事だ。あいや、違うか、宇宙人だろうと円滑に会話が出来る奴は居るんだから、そうとは限らない。なら何者なんだこの男…髪の毛は茶色っぽく、耳の下辺りまで伸びていて…長くもなく短くもない。体型は細身で健康的、身長は…170センチメートルくらいはあるだろうか。その他に特徴はあるかと聞かれれば、彼には申し訳ないが、"無い" としか言いようが無い。そうだな、強いて言えばとてもやる気のなさそうな抜けた顔だ・・・どこかで会ったか?って、こんな事じゃないだろう最初に聞くべきなのは・・・お前は一体誰なんだ?

「ああ、俺か・・・そうだな、 "キヨサップ鈴木" …とでも呼んでくれ」

 さて、部室に行くか。

「待て待てっ、決してふざけてる訳じゃないんだ。わけあって本当の名前は名乗れないというか、名乗ったら面倒なことになるだろうからな・・・とりあえず、話だけでも聞いてくれ、大事な話なんだ」

 まったく要領を得ない。まあ、そこまで言うなら聞いてやってもいいが、手短に済ませてくれ。

「もちろんだ。俺も某えせ超能力者みたいな、かったるい説明は嫌いだからな。・・・あれは、15年程前の話だ。俺はある魔王の胎内から生まれた。『少し…世界征服しようか』 魔王は――」

 さて、部室に

「ああっ!悪かった!話すって、今度こそ話すって!」

 キヨサップ鈴木・・・面倒だから "彼" でいいだろう。うん、結局こっちがしっくりくるな。 "彼" は組んでいた腕を解き、右腕は下げたまま左手を腰に当てて気だるそうに話し始めた。やっとね。

「こんな諺知ってるか?『 鐘も撞木の当たりよう 』って言うんだが…」

 ああ、それなら知ってるよ。鐘ってのはお寺にあるやつだろ。それを鳴らす撞木。詰まり、吊るしてあるでっかい槌の事。良い音が出るかどうかはその槌の当たりよう、世の中の事象もまた然り。やり方次第で良い方にも悪い方にも転化するっていう奴だった…ような気がする。まあ、ほぼ諺の文そのままだな。

「ああ、そうだ。夫婦も連れ添う相手次第ってな。で、いきなりなんだが・・・朝倉…涼子っていう奴がこっちに来てるだろ」

 なんだ、朝倉を探してるのか。ならニアミスだったな。さっき下に降りて行ったぞ。追いかけるなら早いほうが良い…なんて、それが目的なら始めからこんな回りくどい聞き方をするはず無いわけで・・・待て、夫婦って何か違うだろ。

「俺じゃ駄目だったんだ。まあ、やっぱトラウマってのは簡単には拭えないって事でな。ってことで、後はお前に託されたって訳なのさ」

 いや、分からん。何のことかさっぱりだ。面倒だからって、どこか大事なところを端折って無いだろうな?キヨサップ鈴木。

「だからかったるいのは嫌いって言っただろ」
「だからって、そこが大事なところでしょーがっ!?」
「おそらくお前は朝倉を探すことになると思う。その時は初心に帰れ、神頼みってやつだ。上手な嘘より下手な実意だぞ」

 「じゃあな、アルファバージニス」と右手を振って3階に上がっていく彼。って、訳が分からん。さっぱりだ!ああ~さっぱりさっぱり!もっと詳しく聞かせてくれないと困る、すぐさま階段の踊り場まで駆け上がったが

 ―――居ない。

 おいおい・・・まだ夜も更けて無いってのに。うすら怖い。なんだってんだ一体・・・まさか、またハルヒコの仕業か?―そうじゃないとしてもハルヒコが関わってるのには違いない。うぅむ、これは一度、長門に相談してみたほうがいいかもしれん。そう思い立ったが吉日。吉となるか凶となるか分からないが、とりあえず部室に向かおう…たくっ、分からない事だらけだ。どうか、明日の朝日を拝めなくなる様な事にはならんでくれよと祈りつつ、部室の扉を開けた。

 ああ・・・こりゃぁ、不味いかもない。

 今日は厄日だったろうか?なぜ、悪いことってのは重なるんだろうね。もともと、そんなに溜まっている方じゃないやる気ってやつが、一気に無くなっちまう・・・何故ならば―――


 長門が、2人いた。


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