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私に還りなさい生まれる前に

第17幕

 古くから日本庶民の口のお供として親しまれてきた。米粉や小麦粉を原材料に塩、醤油、霰、霰餅、お欠き、欠き餅などと呼ばれ中国由来とも言われる伝統菓子、煎餅。緑茶や生茶と共に飲むとその美味しさは相乗効果を呼んで倍に膨れ上がる。暖かいお茶だと尚良いだろう。顎が強くなるとか歯が強くなるとか夜更かしできるとか、まあどうでもいいのだが。詰まりあたしが言いたいのは朝倉、夜中にそんなに食べたら要らないお供が増殖するぞって事だ。
「あら、もう具合は大丈夫なの?」

 月~金曜日のドラマの出演者たちが様々なレクリエーションで得点を競い賞金を手にする生放送番組を見ていたタンクトップにトランクス姿の女子高生が居る。本当に宇宙人なのか疑いたくなるね。

「ああ、お陰さまですっかり良くなったよ。明日からは普通に登校できそうだ」
「ひょお、ほれはほはったわ。ぁいら!」

 青髪の脳天に軽くチョップを喰らわしてみる。食べながら話すんじゃありません!うちの弟か?お前は。大体くつろぎ過ぎじゃないのか。寝て起きたら3ヶ月は経ってるんじゃないかと勘違いしたよ。それにいくら暖かいからってそのままで寝るんじゃないぞ、風邪引いちまうからな、って

「ちょっと待て。お前が着てるそれ・・・」
「え?・・ああ、キョンちゃんのよ。良いのがあったから借りてみたの。大丈夫よ、ちゃんと洗って返すもの。でも・・・バストがちょっときついかしら?」
「朝倉ぁ、人のものを勝手に借りておいて言う言葉はそれだけか?返せ、すぐ返せ、今返せ。あまつさえ要らんことを言っ―――ん?」

 「お詫びのしるしっ」そう言って渡したのは食べかけの煎餅。どういう事かさっぱりだ。この煎餅としての形を4分の3ほど失ったものをお詫びとして渡す?朝倉は一体何を考えてるんだ…ああ、さっぱりだ。

「駄目?足りない?キョンちゃん。でも、今回は間接キスで許して・・・本番はまた今度・・・ね?」
「そんなん無いわ!」

 はぁ、悪いがあたしは風呂に入るぞ。む、悪いって何だ?なにも悪くないぞあたしはっ。だが、踵を返したところで右腕を掴まれる。まだ何かあるの・・・・かぁ?

「食べてくれないと、 "コレ"で・・連れ回しちゃうわよ?」
 
 はひ?なんでしょうか、その黒い物体は。腰に巻くベルトより明らかに小さく、その端からは長い長い銀の鎖が連なっている。えっと、つまりそれは・・・首輪?

「マジですか」
「・・・ふふふ」

 おお、これが天使のような悪魔の笑顔ってやつだ・・・。いや、待てよ。これは単なる脅しだろ。ここで断っても難なくいけるんじゃないか。ちょっと試してみようか

「あたしは食べな――カチャ

 うっお、丸めていた首輪を解放する悪魔の笑顔・・・すみませんでした。食べるんで、先ずその物騒なのを閉まって下さいな~オネイサン。仕方なく、朝倉の右手にある煎餅を食べる。ソファーに座っている朝倉がひょいっと腕を上げているだけなのですこし屈まなければならない。肩から滑り落ちた髪が垂れる。

「…あーむっ」

  バリボリッバリボリッ

 ああ、旨い。眼と身体が醒めそうだ。でも一枚で十分だな、あたしは。食べすぎには注意だぞっと、どうだ、これで文句無いだろう小悪魔さん。って、おい聞いてるのか?朝倉っ?

「・・っへ?ええ!もちろん!でも、残念だわ…コッチの方も楽しみだったんだけど…」

 そう言いながら黒い首輪を見つめる朝倉。一体何処で拾ってきたんだか…。

「へいへい、残念でしたね。はぁ・・じゃ、風呂入ってくるから」

 そう言ってあたしは浴槽へ向かったが、朝倉は右手を見つめたまま上の空の様だ。何をしてるんだ?あいつは。
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