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遥か空響いてる祈りは奇跡に

第15幕

 年中半そで短パンの元気っ子、目指せ皆勤賞!風邪など一度もありません。なんていう子どもがクラスに1人くらい居たことはないだろうか。幼稚園、小学校に中学校。高校になったら流石に居る確率は低いかもしれないがあたしのが通っていた小学校では2人くらい存在していた。一度でいいからそう活発に過ごしてみたいものだと思うこともあったが、あんなことあたしが真似しようものならすぐさまばい菌さんのお世話になってしまう。まあ、何が言いたいかって言うと。あたしの免疫力は並だって話。
 暑くもなく寒くもなく、湿度も気にならないそんな平日の昼下がり。あたしは自分のベッドの上で仰向けになっていた。たった今測り終えた体温計は39度、完璧なる風邪である。もちろん電球などには当ててはいないぞ?そりゃ、ハルヒコの馬鹿元気に振り回されるのはうんざりだが、そんなことして学校を休んだって次の日に雑務が激増するだけだしな。

「ああ・・・下がらないな」

 流石に巫女服などと言う薄着で朝から夜の空気が冷え込む時間まで過ごしていれば体調も崩すか。それに理解不能な出来事が合わされば尚更だ。ああ、思い出したらまた気分が悪くなってきたような…と、部屋の扉を開いて朝倉涼子が入ってくる。

「どぉ~お?具合は」
「ん・・・変化なし」
「ふぅん、そう。なんだか面倒なのね人間って。私たちならウィルスが侵入する前に対処するけど」

 なら、今すぐ宇宙的パワーであたしの風邪を治してくれ。そうすれば万事解決だろ。

「だぁめ。そしたら私がキョンちゃんを看病する事ができないじゃない?」

 そう言いながら額を冷やすタオルを取り替える。実に楽しそうだ。でもこっち楽しくないんですよ~?苦しいんですよ~?看病ってな、本当にあたしの事心配してくれるなら早く治すことを優先させなさいよ。

「あ、そうだ。風邪を治すには栄養摂取が大事なのよねっ」

 「ちょっと待っててね」とそそくさと部屋を後にする朝倉さん。お願いですからあたしの意見を聞いてくださいな・・・そうして1分と経たないうちに戻ってきた、その手に持っていたのは鍋。

「ジャ~ン!これが栄養の王様、一発逆転の"おでん"よっ!」
「・・・朝倉」
「丁度いい具合に出来上がってるわ…コレを食べれば明日にはいつも通り。いいえ、もしかしたらいつも以上に元気になって成長促進かも・・・うん、いいわ。さぁ、キョンちゃん。今食べさせてあげるわね」
「待て待て!!病人にそんな食べ応えのあるものを食わせるんじゃない!食べれるわけ無いだろっ」
「あら、そうなの?」
「そうなのっ」
「なら・・・」

 人差し指を頬に当てながら思案している。いいか、朝倉。風邪を引いて消化器系が弱ってる患者には消化しやすいものとかあんまり噛まなくて済むものが良いんだよ。一番オーソドックスなので言うとお粥ってやつだ。確か、米の5~6倍の水で炊いたら出来上がるはずだ。とりあえず贅沢は言わないからおでんは勘弁してくれ……。

「なるほどね。それなら出来そうだわ」
「ああ、頼んだよ朝倉」
「任せて!このバックアップの名に掛けて!」

 不安しか浮かばん。そして目覚まし時計の針は15時を指そうとしていた時、土鍋を持った朝倉がやってきた。

「できたわ~」
「おお、どうだ」
「ジャ~ン!」
「・・・朝倉、コレは?」
「お粥よ?」

 違う。このアブラナ科の野菜や鳥類の恩恵を受けた煮物は何だと聞いてるんだが。

「おでんよっ」

 さも当然のように言い放った!あ・・・はぁ、分かりましたよ。もはや気力の限界だ。これを逃せば次に栄養を摂れるのは明日になるかもしれん。あたしが納得したことを確認したのか、レンゲで粥とよく煮られた大根をを掬い、息を吹きかけて熱を取っている。十分に冷ましたのを確認してか、あたしの口元へと運ぶ。

「さぁさぁ、召し上がれっ!」
「…イタダキマス。・・・っ・・・ん」
「どお?」
「・・・うん。美味しいよ」
「ふふっ、ありがとう。お世辞でも嬉しいわ」

 嘘でもお世辞でもなく、純粋に美味しかった。粥は当然食べやすかったが、驚いたのが大根だ。口に入れて噛んだ瞬間にキレイに広がってお粥と溶け合った。思っていた程食べにくいくとは無く、それどころかとても食べやすかった。おでんってこんなに柔らかかったんだな。恐れ入ったよ朝倉。

「そういえば人間はミンカンリョウホウっていうのがあるみたいね」
「ん、ああ、まあな。ネギを首に巻くとか卵酒に生姜湯とかダイコン飴なんてのもあるらしいな」
「へぇ~そういうのもあるのね」
「?じゃあ、朝倉はどんな民間療法を調べたんだ?」
「他人に移すと風邪は治るって書いてあったわ」
「ああ、それもあったな。でもそれ信憑性は薄いんじゃ・・・朝倉、さん?」

 目の前で先ほどと同じように掬った粥を冷まして、それを自分の口へ運んだ。目と目が合う。近づく・・・まさかっ!?

「ん~・・・」「おいっ?朝倉、ちょっとタンマ!ウェイト!ストーーップ!」

 朝倉の体を引き離そうとした両手を組まれてベッドに倒され、1秒、2秒と着実にゆっくりと距離は縮んで朝倉の顔しか見えなくなるとあたしは目を瞑った。もう何も考えられなくて――――

「おーーーーい!キョン子ぉ!生きてるかぁ?」
「お邪魔します~」
「失礼します」
「・・・」

 部屋の扉からハルヒコとみつる先輩に長門に古泉が現れた。ふっと、朝倉の動きが止まりあたしと同じ方向を向く。おお、なんてタイミング!助かった!

「何してんだ…お前ら…」

 訂正しよう、一難去ってまた一難であった。ああ、熱が上がりそうだ、身体も部屋も……

 
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