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why? そう問い詰めて 大切な人 困らせた日 壊した夢

第83幕
「今気付いたふりはいらないから。さっさと本題に戻らないか。仲が良くなったのはいいが朝倉。桜の花見に来たのに、おままごとセットで遊ぶような真似してる場合じゃないだろうよ」
 三人があたしに振り返る中、悪びれもしない朝倉を眺めながらゆったり5歩で彼の座席の後ろに立った。
「おままごとなんて。誤解よキョンちゃん。私はただ彼らとの誼を通じようとしていただけ」
「まったく違う方向にトンネル開けてみたらそこはチョコレートフォンデュだっただろ。チョコレートフォンデュでディスコってたじゃないか。さらに奥にはおでんの黒歴史が広がるばかりだ。不毛なおでん地帯を拡げるんじゃなくて有希の話で広げようって話だ」
 それを聞くや否や、右隣にいる朝倉が両手で自分の口元を押さえ、瞬時に瞳に水滴を溜め、
「そんなっ……私より、有希の方が良かったのね……ヒドイわっ、私なら親子おでんも、バースデイおでんも、おでんの塩焼きだって作ってあげられるし、どんなマニアックな要望にだって応えてあげられるのにっ!」
 と訴えってきたのを私は左に受け流し、
「だってよ? あんた」
「だってよ? 古泉」
「お気持ちは嬉しいですね。もし貴方がよければ、それらの手作りを一緒に作って行きたいと感じます。料理だけでなく、貴方と過ごす日々を愛情という名のスパイスを効かせ、温もりと言う名のバジルを添えて共に味わいたいですね、キョンさん?」
「気持ちは嬉しい。もしお前さえよければその手作り、俺も手伝わせてくれないか。料理だけじゃなく、お前と過ごすこの日々を愛情とやらのスパイスを効かせて、温もりなんていうバジルを添えた料理にしてお前と味わいたい。そういう日々をお前を含めて味あわせてくれないか、キョン子さん?」
 あたしは朝倉の方を向き、
「気持ちは嬉しいよ。もし朝倉さえ良ければその手作り、あたしにも手伝わせてくれないか? 料理だけじゃなくて、朝倉と過ごす日々をあ、愛……あぃ…あぃぃ…じょぅ、ぅぅぅぅッ ジョーダンきついわっ! ジョーダンッ! 台詞のスリーポイントシュートはいらないんだよ! 何でこんな台詞回しになってる? はずっ――じゃない! 進まないだろハ・ナ・シ・が!」
 朝倉は後ろで右肘を抱え、その先にある右手は蒼髪ポニーの先っぽのところを弄り、持て余した朝倉の視線を投げかける。
 朝倉よ。顔の表面温度は上げていい状況かな。あたしには分からん。
「そんなことない。嬉しいわ。キョンちゃん、不出来な朝倉涼子を、これからも宜しくお願い「し・ま・せ・る・かっ!」
 ふわりと浮かんだ前髪の分け目に手刀を食らわした。
 熱い、熱いねぇ、頭も、心も。
「おいおい、いい加減にしろよ。いま長門が何で連れさらわれたのか話してるんだから。真面目にに参加してくれ」
「僕も同意見です」
「本当にキョンちゃんは困ったキョンちゃん何だから」
「最後のお前の言葉は承服できんが、もういい。それで、古泉くんは何か知っていないの。今回の事件のこと」
 朝倉が右肘をかけて古泉くんの座席に寄りかかるように、あたしは左肘を彼の座席に寄りかからせる。
「結論から言えば、何の情報も持っておりません。あなた方と同じ状況。巻き込まれている真っ最中です。なぜ森さんたちがこのような行動をとったのか。考えられる理由の一つ目はアトラクションとしての行動ですが、これは安全性が高い。被害が最小限で元に戻ることが出来る行動です。しかし、それなら同じ『機関』である僕に何の相談もないというのは不可解です。二つ目は、研究対象としての、長門さん、奪取」
「穏やかじゃないな。もしそれならお前に相談しなかったのは妨害される危険を考慮知ってってことになるが」
「私たちの目の前に姿を晒す必要はないわよね」
「その通りです。あれは完全に僕たちの追尾を促す行動だと思います」
「って、事はやっぱりトラップか」
「そうなるでしょう。ここまでの航行中なんの攻撃も受けていないことを考えると、目的地でないと成せない計画、ということになりますか」
「とりあえずの目的地は長門がヒント残してくれたからいいとして、あの"アホ"が長門をどうこうする考え……は持っているかも知れんが、実行に移せるとは考えにくいのが引っかかるな」
「なら、実行に移した本人を知っているか、目撃したということはないかしら。ヒントの次のヒントって事よ」
「ヒントの次の。じゃあ、森さんがどこかの建物に出入りしたのを見たってことか。それにしても、なんでそんなこと長門が知っているんだ」
「いや、森さんじゃ……ないかもしれない」
 三人はあたしに振り返る。
「だって、長門だぞ。あの長門を簡単に無力化できると思うか」
「無理ね。それは私が一番知っているわ。この世界の『機関』とやらの科学力じゃ有希の読書を止めることさえ不可能よ。大変なんだから」
「なら誰が」
 自転車を猛スピードで下ったさきの曲がり角に誰もいないことを祈るような顔で彼は、
「まさか、天蓋領域が」
「その可能性も否定出来ないけど。今回のこと、あたしがこっちに跳んできた事と何か関係があるんじゃないかと思う」
 朝倉があたしのあだ名を呟き、彼はその理由を問いただし、古泉くんは飛行方向を向いて口を結ぶ。
 確信はない。ただのカンだ。
 それで、この話し合いをかき乱すのはド余計なことにも思えたが、どうしても伝えなくちゃいけないことだと感じたんだ。居て欲しいという思いと、そんな事はしていないという思いを乗せて伝えておきたいと。
 そしてあたしは、ブレザーの右ポケットに入れていた翡翠のペンダントを握り締めて、彼女の名を呼んだ。



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