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連続更新した結果がこれだよ!!!

第66幕

「よう、ご苦労さん」
 諸手を地に付けながら涼しげな彼が労ってくれる。
 それは嬉しい事なんだが、もう、息をするのも辛い。出来る事なら貴方に代わって欲しいね。
「ハルヒと顔を合わせるってことは、それくらいの覚悟はしておいて貰わないと困る。俺は毎日辛苦を味わってるんだ」
 忌々しげに話す彼を横目に、ビニルシートに腰を降ろすと力が抜ける。
 するつもりが無くとも、大の字を自分の身体で描いてしまう。

 どこからか聞こえてくる海鳥の泣き声や、打ち寄せる漣。あたしの代わりにハルヒの生贄となった朝比奈さんの嬌声を背面演奏にして、一寸を過ごす。あと、着弾音もな。
 やがて荒々しかった息も、心の臓も、十数年間過ごしてきた中の平均的数値を示し始める。

「思うんだが」

 声の発生源である左方を見てみたが、その声の主は前方の岸辺を見やったまま、瞳を動かさないでいた。
 それに習って、あたしは上半身だけを起こすと、彼は言葉を続けた。
「お前ってもう少し、女言葉で話そうとは思わないのか」
 まだ残る疲れと共にため息が出てくる。
 真剣な顔で何を言うのかと思えばそんな事か。女言葉、男言葉、猫語、犬語に各方言。人の話し方なんて自由だろ。ましてや同年代で、標準語で、性別以外は同一人物だ。それで違いが生まれるとは思わないし、あたしは十数年間このスタイルだ。放っておいてくれ。
「でもな……」
 諦めが悪いな。
「性別以外は同一人物なんて、一生出会えないかもしれないだろ? だから味わっておきたいのさ。女言葉の俺ってどんな感じなんだろう、ってな」

 物好きな奴だな、貴方は。
 だったら自分で話せばいいだろう。そしたら貴方の疑念も晴れるし、あたしも愉しめるしで一石二鳥だ。なんならハルヒも呼んで連れて来てやろうか。
「そういう意味じゃなくてだな……お前が……女性体である俺が話すってところに興味があるんだ。というか、分かってるだろう?」

 ああ、まあな。

「それに、似たり寄ったりで、聞いてて分かり難い」
 一体誰が分かり難いんだ? 朝比奈さん程じゃないが、あたしのキューティクルボイスと貴方の苦労が掛かった低音楽器を間違える奴がいるとは思えないんだが。

 互いに顔を合わせぬまま、口角を二十度ほど上げる。ふっ、という蝋燭の火でも消すような音が大気を振るわせる。
 そして、彼だけが、寝ぼけ面をこちらに向けながら、
「それとも…………恥ずかしいのか?」
「ばっ――――」
 かか!?
 あたしは女なんだから、女言葉で話すくらいどうってことないぞ!
「じゃあ、いいじゃねえか」
「嫌だね。貴方にだけは見せたくも、聞かせたくもないね」
 本当はどっちでも良かったのだが。ついつい、そんなことを口に出しちまったもんだから、さあ、意地の張り合いだ。
 ずっと、じっと、ずっと、じっと
 口を結び、見詰め続ける。
 しばらして、夏という気候の特徴に、二人で根負け、目線を外す。自然と結んだ口元が緩む。
「あー、じゃあこういうのはどうだ」 と右の人差し指だけを伸ばす彼。
「日本古来から伝来している。ゲンコツとハサミと紙切れを使った勝負で負けたほうがデコピンを受けて、そのあと女言葉で一言、ってのは」
 はあ……あたしも男だったらこんな訳の分からない事を――――

――最初はグー!」

   なっ!?

「ジャン、ケン、ホイ!」

 彼は紙切れ。あたしはゲンコツ・・・卑怯な・・・。
「約束は約束だ。同一人物としてあまり俺を失望させないでくれよ?」
 どこぞの悪役のような彼の顔は『ワクワクが止まらねえ!』といった形で、右中指を左中指で止めて力を溜める。
 雑用係の名は伊達ではないのか。握力のありそうな筋肉質な指が、あたしの額に迫り――――――――――パ チ ン ッ !

 虚空で木霊する綺麗な音を立てて、決定打を叩き込んだ。
 キョン子はうずくまり、額で両手を抑えながら寸秒、動かない。
 どうだ。次は一言だぞ?・・・・・・む、少し長くないか? もしや、眼にでも入ってしまっただろうか。
「キョン子……?」
「…………くぅ…………うぅぅ……」と呻く声が俺の単細胞へと響く。

 やっちまった。

 言い訳を考えてしまう自分を蹴散らし、すぐさま謝罪の旨を伝えるが、反応は薄く、呻き続けたままだ。
 キョン子の顔は、頬のあたりから紅潮していき、瞳は潤み、肩から、背中から小刻みに震え出し、発する次の一言も、しっとりと、俺の細胞活動を絡め取るような音色を放つ。

「――――いたい、じゃない」

 額を覆った両手の下の目線は額と俺を射抜き、離さない。

「――――いたい ――――いたいよ、キョン」

 二つ、三つと放たれた言葉は、申し訳なく思わせるのと同時に嗜虐心を沸き立たせて来る気がして、俺は、もっと――――――――――――











   パチンッ

「なんてな!」
 パッ、と映像を映す電化製品の画面ように、キョン子は"哀" から "喜" へと切り替わる。
「なかなか愉しませて貰ったぞ、貴方のマヌケ面」
 頭のページを新規作成すること数十回。やっと俺はその意味を理解し、これ以上醜態を見せまいと、左手で反撃打を見舞われた額を覆った。それが精一杯だった。



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コメント

No title

わー、キョン×キョン子だー。いいね、甘いね(笑)
ウチの方はどうなっちゃうんでしょう?
それにしてもここにきて空気な古泉乙ww

No title

こんにちわ、神の味噌汁のコンスタンティンです。
早速SS読ませてもらいました!!
性転換はあまり好きじゃなかったんですが、一気に変わってしまいましたw
キョン子可愛いですね…www
これからもちょこちょこ見に来ますのでよろしくお願いします。

あ、あとリンクはらせてもらってもよろしいでしょうか?
びびりなもんですいませんw

No title

蔵人さん>コメント有難う御座います!
蔵人さん、自信持っていいですよ! 蔵人さんのキョン×キョン子もアリです! 純です!
そういえば、古泉どうしたんだw
きっと、森さんにからかわれているのではないでしょうか!

コンスタンティンさん>コメント有難う御座います!
いやはや、そう言っていただけると嬉しい限りです。キョン子が。

こんなところでもよければジャンジャン貼って下さって良いですよ~
私も後で貼っておきますので、こちらこそ宜しくお願い致します。
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