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あれこれ悩んじゃって ため息しか出てこないやほんと

第57幕
   ラッシャイ

「ええと、予約をした先客が居る筈なのですが……」
「おーい、こっちこっちー」
「ああ、あの方です。では、いえ、どうも……」
「……おつかれさんっ。今日も無事終わったみたいね」
「ええ、お陰さまで。それで、お話なのですが―――」
「まあまあ、いいからっ。まずは一献一献! んっ、ほら、飲みなさいな」
「はぁ……では、お言葉に甘えまして……」

 大輔でも、一葉でも、ましてや八葉でもありません。お察しの通り、いっちゃんです。

 ここは『機関』御用達の・・・といえば聞こえは良いですが、築二十年は越えているであろう木造の居酒屋です。
 二十人ほどで満席になってしまいそうな店内を形作る綺麗に仕上げられた木目の薄茶色の肌が、処によっては黒くなっていたり濃茶になっていたり。年季の入ったこの食台と腰掛椅子は、欠けた窪みすらも滑らかに丸くなっています。
 『機関』の集合場所はこの様に目立たない様に存在しているのが殆どです。

 私の左前に居られるのが新川さんで、このお店の雰囲気と良く似合うくらい痩身麗躯で洗練された彫の深い顔立ち。白髪のオールバックに髭生やし、白のワイシャツの上からでも分かる引き締まった肉体が彼の頼もしさを一層増幅させ、新川さんから見て左側に居られる女性の印象の落差をも増幅させますね。
 食台上には二合徳利が一本、二本、三、四、五本――――こちらも白のワイシャツを身に纏い、その上に羽織っている黒のスーツと共に砕けた着こなしをしていて、首元には控えめのネックレスがあり、鎖骨の前には人肌燗が一本翳されているのですが。
「森さん。また飲み過ぎなのではないでしょうか」
 これを言ってもどうにもならないとは思いましたが、やはり、言わずにはいられません。
 彼女は少し跳ねた檜皮色の髪を左腕の先端にある五指で支えて、いまにも 食台に崩れ落ちそうになる姿はいつものハニーフェイスを崩れさせ、まるで仕事終わりのオフィスワーカーの様に見えます。
「あぁん? いいじゃなーの。こちとら接客業で気ぃ使いまくってんだから。これくらいの息抜き許してよね、いっちゃん」
「それは分かりますが・・・あまり毎日飲み過ぎないよう、御自愛下さい」
「ん~? うぅん」「ほれほれ、さっさと飲め飲め。そして、私に返しなさいよぅ」

 徳利を振りながら催促する彼女を見て、受け取っていた盃に入った液体に口をつけ、返します。

 これはいつもここに来るとやらされるのですが、森さんよれば、無事帰還したお祝いの意味と次回の任務への安全祈願も込めてという意味があるんだとか。まあ、本当の意味はどうなのかは分かりませんが。
 出来上がりまでもう一歩の森さんが盃を受け取り、満足そうに唇を伸ばしながら飲み干し、徳利の中身を注ぐ。
「しかし、今回のはまた大変でしたなあ」
 これらの液体を一滴も飲んでいないであろう新川さんが口を開く。
「ええ。じわじわと空間規模を広げたり、縮めたり。無くなるかと思いきや、瞬間計測でこの国の全土を覆う程に膨れ上がって、また通常の空間規模に落ち着いたり。これほどせわしなく変化するのは初めてじゃないのかと思えるほどでした」
 まあ、原因はおそらく、彼の家にあるとは思いますが。
「んでぇ。もう一つの初めては?」
「ええ、それなのですが……」

 僕は昨日から今日にかけて発生した事象をお二人にご説明しました。彼の髪型などの話の潤滑油は僕だけの胸にしまって置きましたが、新川さんはまっすぐ僕を見ながら、森さんは盃で何かを占うように見詰めながら聞いて下さっていました、
 粗方説明が終わると、新川さんは腕を組み、
「それはまた、難解なお話ですねぇ」
「ふぅん、それで古泉はどう思うわけ?」
「僕が思うに、涼宮さんは彼にもっと構って欲しかったのではないかと思うのです。それで、なかなか分かってくれない彼が、もし同姓だったのなら……そう考えたのではないでしょうか」
「うーん、どうかしらね……そうだとしたら、彼女が心底楽しめたら彼女が帰れるってことになるのよね」
「ええ、そうなります」
「かなり、漠然とした問題になるわ」

 占い終わった盃を飲み干し、もう一杯を注いでいく。まったく、控える気配がありませんね・・・。

「じゃあ、今度はV-25にしましょうか。あそこなら近場だし、イベントの準備も出来るわね、新川」
「了解です。今すぐ準備に取り掛かりましょう」
 森さんの意思を読み取り、携帯電話を取り出しながら外へと向かって行った新川さん。
 えっと、まったく状況が飲み込めませんが。これはどういう事なのでしょうかと疑問に思う僕を気にする素振りも無く考え込んでいるオフィスワーカー参謀。
「あの、森さん。これは」
「――――ああ、久しぶりの休暇ねー! 2週間もぶっ続けで働いてたら気も可笑しくなっちゃうわー。この間みたいな紛争だったら気も紛れるけど、やっぱり人と会話しながら仕事するのは相当、肩に来るわねー」
「は、はぁ……」
 未だに、この方の仕事の全容が掴めません。掴まない方が幸せかもしれませんが。
 新川さんが、男の僕でも思わず嗅いでしまいそうになる香りを漂わせて戻って来ました。
「森さん。手筈は整いました。明日一日あれば完成するかと」
「そう。有難う、新川」「そういうことだから、古泉。涼宮さんへのご進言宜しくね」
「…………分かりました。許可が取れたらすぐに連絡します」
「よぉし、じゃあ対策も決まったところでじゃんじゃん飲みましょう! おやっさーん、熱燗5本追加でー! 後、レバとねぎまと鶏皮5本づつ持って来てー!」

 ここぞとばかり、鬱憤を晴らすように顔を綻ばせて、更に注文を追加しようとお品書きを眺める姿を見るに、どうやら今日は、長くなりそうです。
 せめて、日付が変わる前までに帰れると良いのですが……

「そうだ、この後カラオケ行かない?」

 それも厳しそうです。

 
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コメント

No title

さて、ここには名前とコメント以外に4つも記入欄があるのだが
書かないと不正扱いで表示されなかったりするのかね?
「Mail」「Subject」はまだ分かるとしよう。だが問題は残りの2つである。
あまりこういうのに詳しくないために「URL」なのか「URI」なのか区別ができない。
「Pass」って何だ 何かをどこかで登録する必要があるのか?

どうすりゃいい?

よし、未記入で送信してみよう。
これで表示され何も追求が来ないようなら万々歳だ。
システムに注意指摘されても知ったこっちゃねぇや。
我が貧困たる脳味噌にゃ難しいんだよ。 悪いか。
いや、でも、表示されなかったらこの文にかけた約15分の手間はどうなるんだ。
百円くらいの価値はあると思うぜ。

ところでこの文、あるキャラクターの語りに似せてみたんだが・・・どう思うよ。
初めてにしちゃなかなかじゃないかと筆者は自惚れているぞ。

さて、いざ書き込みテストだ。幸運を祈るよ。

No title

無事に書き込めたようで何よりだ。ホッとしたよ。
ちなみに筆者の一人称は「俺」ではなく「僕」なんだが・・・どうでもいいか。悪かった。

本題~
いきなり変なコメント書いてすいませんでした。
前々から感想などを書き込もうと思っていたのですが「難関」がでしてね・・・。
とりあえず初めまして。
・・・ん? 微妙に初めましてじゃないか。
「「17幕はキョン子とハルヒの夜のイベント(笑)に違いないっっ」
と楽しみにしとったら見事に外れましたー」
と書きたかっただけなのですがえらく長くなったw

キョン子SSをいつも楽しみにさせてもらってます
以後お見知りおきを。(ぇ

No title

うわっはっはw 無記入じゃなw
あー、すみません。なんだか面白くてw
キョンかな? キョン子かな? いや、意外と銀さんという線もありうry
コメント、誠に有難う御座います!!
すみません、すみません! 残念ながら古泉でした! すみません!

蔵人さんのところでもちょこちょこ拝見させて頂いておりましたが、ここでは初めましてです探求閲覧者さま!
楽しみにして下さって有難う御座います!
これからもどうぞご贔屓に!

そうですね。1万HITくらいしたら、拙いなりに番外編で書きましょうか。その夜のイベントとやらをw
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