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覚えていますか 目と目が合った時を

第52幕
「ただいまー」
「お邪魔しまーす」
「失礼します」
 お天道様がお休みになる酉の刻。いわゆる午後の6時が過ぎようとしている頃に、やっとこさ俺たちは家に辿りついたのだが・・・。
「ハルヒ。何故お前も敷居を跨いでるんだ?」
「いいじゃんいいじゃん。細かいこと気にしないの。そんなんじゃSOS団員は務まらないわよ」
 女らしい声に鋭さのある属性を備えたSOS団団長様は俺の左でそんなことを言ってはいるが、俺が言いたいのはそういうことではなく。ここに来ることを親御さんには言ったのかということだ。
「言ったわよ」
 俺を見ず、鞄の持つ腕の肘を抱きながら答える。
 即答過ぎて逆に怪しいものだな。本当に言ったとしてだ。どんな理由でウチに来る様にしたのか知りたいものだ。まさか、男の家に夕飯を食べに行くなんて事を簡単に許すような親なんて、居るような気がしない。幼馴染とかだったら話は別であろうが。ひとまず、夕飯でも食ったら満足して帰るんじゃないだろうかね。
「おかえりなさーい。あっ、ハルにゃんだー! こんばんは~」
 今年で小学6年生になった一人娘がフローリングを大事に扱わずに走ってくるのに合わせて団長がしゃがみ込む。丁度、妹の目線になるくらいだ。
「こんばんは、妹ちゃんっ。キョンはしっかり勉強してる?」
「ぼちぼちですなぁー」
「そう。なら、アタシがみっちりしごいてあげるから安心して!」
「うーん……かていきょうしー?」
「そうそう。分かってるわねー。頭の固いキョンとは大違いよ」
 もう一度こっちを向いて言ってみろ。小学6年に負ける俺じゃないぞ? 真っ裸で町内ひとっ走りとか、かくれんぼとかは流石に負けるが。積みゲーぐらいは勝てる自信はある。あと、オセロに将棋に・・・っく、いらんやつの顔を思い出しちまった。
 などという俺の思惑を解する筈もなく、妹が声変わりの予兆もない、甲高い声で質問を続けた。
「そっちのひとはだれー? キョンくんのかくし子?」
 兄を挟んで、ハルヒの反対側で澄ましているポニーテール少女に話しかける。
 隠し子? 馬鹿な。俺は、赤ん坊の時から精力旺盛だったとでも言うつもりか小学6年生。
「な、そうなのキョン?!」
「なわけあるか!」「おい、母さんは?」
 一緒に目線を向けてくるハルヒを横目に、隣のちっこいのに問いかける。
「おかあさんなら――」
「あらら、いらっしゃい。クラスのお友達? こんなに沢山っ」
 母親という名がしっかりと板についた女性がスーツ姿でリビングの扉を開いて出てくる。母にとっては十進法の2以降は沢山に変換されるらしい。
 こいつとお友達くらいだったらこんな大変な目には遭ってないだろうなぁ。そんな、ただのお友達とは言えない女子高生が一礼をして、
「今晩は。お母様。キョンくんと一緒のクラスでお世話になっております。涼宮ハルヒと申します。今日は泊りがけでお勉強会を開かせて頂く事になりました。突然で申し訳ありませんが、どうか宜しくお願い致します」

 あえて言おう、初耳であると。

「これはこれはご丁寧に……折角来てもらって済まないけど。私、仕事で出かけなきゃならないのよ」
「え、そうなのか」
「そうなのよっ。三、四日くらいは帰って来れないと思う。だから、キョン。しっかり御もてなしするんだよ? もちろん勉強も見てもらいなさいね!?」「じゃあ二人とも、キョンを宜しく! ―――この色男がっ」
 簡易ドップラー効果を発生させつつ玄関を出て行く母親が、最後何か囁いて行った。それは一体全体、誰の事だ? SOS団雑用には関係のない言葉である。キョン子は会釈をしながら、ハルヒは妹と一緒に「お気を付けてー」といった様子で見送ってくれていた。
「あんたからは想像できないくらい、綺麗なお母さんじゃない」
「そいつはどうも。出来れば俺に対するフォローも頼むよ」
「さぁて、妹ちゃん! お腹空かない?」
「ぺっこぺこー♪」
 おーい。聞いてるかー? ・・・聞いてたらリビングの方へ向かう筈がないよな。脱いだ靴を揃え、腕をまくりながら花を咲かせて歩いていったハルヒは今頃、冷蔵庫の中を見て文句を言っている頃だろう。
「わー、殆ど何もないじゃない! どうしようかしら……」
 ってな。

 なんだかんだ言っても俺だってお腹はぺこぺこで、背中とくっ付きそうだ。これは素直にリビングにあるキッチンに向かうのが吉だな。靴を脱いでそのまま鞄を置きに自分の部屋に足を向かせようとするのだが……
「どうした? 入って良いぞ?」
「ん? ああ、そうだな。お邪魔、します」
 靴を一つ、もう一つと、普通より時間をかけて脱いでいる姿に俺は思わず心配しちまった。
「何か・・・あったのか」
 斜め下の床板を見つめて、一時止まり、斜め上を見上げる。
「いや……ウチにも家庭教師が来たなって、思ってさ……」



 
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コメント

No title

おお?キョン子が黄昏てる……………
どうなっちゃうのか自分とこそっちのけで期待しちゃうぜ(駄目じゃん)

No title

蔵人さん>コメント有難う御座います!
ハッキリ言ってしまえば、ちょっと、憂鬱という名が似合う作品になるかもしれないという・・・話。
なので、蔵人さんのSSで癒されたりしてますですよー
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